「福岡の英語教育」について

『私は福岡の子供たちを日本で一番英語が話せるようにしたいと思っています。英語力は、欧米はもちろん、アジアにおいても、ビジネス・学問など何をするにも必須のものです。場合によっては冷暖房もないような環境で育つ、ハングリー精神が強いアジアの子どもたちにも負けないように、福岡の子どもたちも力強く育てていかなければなりません。これは福岡、日本の未来にとっても、とても大切なことです。』

この言葉は髙島市長がかつてご自身のブログの中で「福岡の英語教育」というタイトルで記された一文です。私は、市長のこの言葉に賛成であり、市長のこの思いをぜひ実現してもらいたいという気持ちから、このテーマについて質問させていただきます。

質問:まず、本市の小中学校では英語力を高めるためにこれまでどのような取り組みを行ってきたのか。平成29年度と30年度の関連事業の予算と主な事業内容は?

【福岡市教育長答弁】英語教育に関する予算は、小学校と中学校を合わせた総額として

平成29年度は約413,000千円、平成30年度は約509,000千円

主な事業としては、平成29年度は小学校の5・6年生に英語が堪能な地域人材であるゲストティーチャーを、中学校の全学年に外国人英語指導講師であるネイティブスピーカーを配置するとともに、300名の生徒を対象にハウステンボスなどの施設を活用して、2泊3日での英語体験活動を行うグローバルチャレンジ推進事業などを実施した。

平成30年度は新たに、小学校3・4年生にゲストティーチャーを配置するとともに、小学校5・6年生にネイティブスピーカーを配置することで、英語によるコミュニケーション活動の充実を図っている。なお、グローバルチャレンジ推進事業は30年度は実施していない。

 

質問:釜山やハウステンボスで行われてきた「グローバルチャレンジ推進事業」という英語体験学習は、「聞く力」「話す力」に加え、長文の英語を「読む力」「書く力」を伸ばすことが出来たと子ども達にとって一定の評価があったと聞いていたが、なぜ今年度は実施していないのか?

グローバルチャレンジ推進事業については、英語に興味を持つ生徒の英語力を伸ばす点で一定の成果はあったが、一部の生徒しか参加できない点や、平成30年度から全ての学校の小学校5・6年生にネイティブスピーカーを配置することなどにより、日常の授業における外国人との英語によるコミュニケーション活動の充実を図ることとし本年度は実施していない。

 

ご指摘の通り、希望者から選ばれた一部の生徒しか体験できない事業であることは課題。全員に等しく体験できる環境が必要だと私も思います。先日、博多区の住吉中学校ではICTを活用し、韓国ソウルの中学校とインターネット中継でお互いの教室をつなぎ、両国の文化を英語で紹介しあい交流する授業があったと伺った。

質問:海外の学校と福岡の学校を映像でつなぎ英語で交流するICTを使った遠隔授業は、基本的に全員が体験できる事業であり良いと思うのですが、この取り組みの詳細は?またかかる費用はいくらなのか?

博多区の住吉中学校では、ウェブ上のテレビ会議システムを活用し、3年生がソウルの中学の生徒と互いの国の文化を紹介し合う合同授業を実施。費用は、既存の情報機器とソフトを活用しているため必要なかった。

 

質問:住吉中学校以外にも遠隔授業を行っている学校はあるのか?事例があればお示しください。

〇能古中学校では、ニュージーランド在住の外国人講師と英語での交流を行う授業を実施した。

 

質問:まだ事例は少ないようだが、遠隔授業で市内の子供たちが海外の同年代の子供たちや海外で暮らす人達と実際に言葉を交わすという体験は、英語を学ぶことの意味や大切さを実感できる大変よい機会になると思う。しかも、費用はかからずに生徒全員が体験できるということですから、ぜひこれを全市的に広げていただければと思いますが?

遠隔授業は、空間を越え児童生徒が様々な人と英語などを活用して交流し合う効果的な手段であると認識している。今後は、時差などを考慮しながら相手校の選定を行い、多くの学校で実施できるよう取り組んでいく。

是非、多くの学校で取り組みが始まりますよう要望致します。先ほどの答弁では、小学校5・6年生にネイティブスピーカーを配置するために平成30年度に新たに1億円近くの予算を上乗せしたとのことですが、

質問:このネイティブスピーカーは実際どのような授業を行っているのか?また、それによってどのような成果が出ているのか?

ネイティブスピーカーは委託会社から派遣されている外国籍の英語指導講師で、担任とともに英語の授業を進めることができ、生徒に英語で質問して、その場で英語で答えさせるなど、コミュニケーション活動の充実を図るような授業を行っている。児童生徒の生きた英語に触れる時間が増えることにより一人ひとりの英語の実践的なコミュニケーション能力や英語を積極的に聞き話そうとする意欲が高まった。

 

英語教育の入り口である小学校の段階から、子供たちが生きた英語に触れ、英語でコミュニケーションを取る能力を高める授業を積極的に取り入れていくことは大変よいことですので、引き続きしっかり取り組んでいただきたいと思います。それと同時に、英語教育が本格化する中学校の段階では、小学校の段階から実施してきた英語教育の効果がどの程度上がっているのかを目に見える形で測定し、その後の指導や次の施策につなげていくことが大変重要になります。

質問:文部科学省の「第2次教育振興基本計画」では、中学卒業までにCEFRのA1つまり英検3級相当以上を達成した中学生を50%にするという目標数値が掲げられている。福岡市では中学段階で英語の実力を知るために、どのような基準で能力を測っているのか?

福岡市においては、市内の全中学校3年生を対象に英語力を測定する英語チャレンジテストを行っている。

質問:中学段階で行われる英語チャレンジテストとはどのようなテストなのか?

〇公益財団法人日本英語検定協会が開発した「英検IBA」を採用。

〇内容は「読む」「聞く」の2技能により判定。

〇授業1コマ枠内で実施可能。

〇合否判定ではなく,技能別学習到達状況等を示した結果を生徒に渡すことができ,その後の学習に生かすことができる。

 

「読む」「聞く」の2技能により判定しているとのことですが、国が数値目標を掲げている英検の場合、それに「書く」「話す」を加えた4技能で英語力を測定している。

質問:「書く」「話す」の2技能については、現在どのように測定しているのか?

「書くこと」については、あるテーマについてまとめた英文を書く課題を提出させるなど、英語科教員が評価を行っている。「話すこと」については、ネイティブスピーカー等も活用し、実際に英語による応答を行うなど、各学校が工夫して評価を行っている。

私は先日、京都市に伺いお話を伺ってきました。京都市は「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能に対応している英検の受験料を補助する取り組みを行っています。4技能に対応している試験なので、国の目標に対し正確な達成度を計ることができます。また合格すれば相当級の資格がもらえる点で生徒のモチベーションを上げることができると現場の先生方も語っておられるそうです。

福岡市では、せっかく小学校高学年と中学校の全学年にネイティブスピーカーを配置するなどして、4技能の能力を高める教育を実施しているのに、その効果を測定する「チャレンジテスト」が「読む」「聞く」の2技能しか対応できていないことは大きな課題です。

質問:ぜひ4技能をきちんと客観的な数値で測定できるようにすべきと考えますが?

「読むこと」「聞くこと」に加え「書くこと」「話すこと」の4つの技能から、すべての生徒の英語力を評価し、指導に生かすことは重要だと認識している。文部科学省においては、平成31年度の全国学力・学習状況調査において中学校3年生を対象に4つの技能よる英語調査が実施される予定である。

福岡市においても、4つの技能からすべての生徒の英語力を測り指導に生かすためのあり方について国の動向や全国学力・学習状況調査の実施方法の状況、民間試験団体の試験開発の状況や他都市の事例などをふまえ検討していく。

 

これまで教育長にお尋ねしてきましたが、英語教育の充実にはやはり福岡市全体での後押しが欠かせません。具体的支援として、京都市以外にも政令市では静岡市と横浜市、東京23区においても9つの区が4技能に対応している英検の受験料を一部補助するなど、子供たちをグローバル人材に育てることを目的に財政支援を行っています。

中でも横浜市では、中学3年生を対象に、全員の英検受験料を全額補助。29年度の予算で約6400万円。学校の授業のコマとして2時間程度を使って各中学校で実施しているとのことです。29年度は約26,000人の対象者が英検に挑戦しており、辞退者はほとんどいないというお話です。まさに日本一の英語教育の支援だと思います。

この質問の冒頭でご紹介した「福岡の子供たちを日本で一番英語が話せるようにしたい」という髙島市長の熱い思いは、今もきっと変わらないことと思います。行政としても他都市に負けない「福岡の英語教育」で日本一の支援を目指していただくよう要望いたします。

質問:福岡の子供たちの英語力を伸ばし、世界で挑戦・活躍するグローバルな人材の育成に向けた、髙島市長のご所見を最後にお伺いします。

【髙島市長答弁】世界に視野を広げて活躍できるグローバルな人材を育成していくことは、アジアに開かれた国際交流都市として発展していく福岡市を支え、担っていく世代を育てることであり、子どもたちが様々な国の文化を尊重する態度を身につけるとともに、国際共通語である英語によるコミュニケーション能力を高めていくことは必要であると認識している。 

今後も教育委員会と連携を図りながら、福岡市の英語教育の取り組みを積極的に支援し、世界に羽ばたき行動する国際人づくりを推進していく。