12月議会一般質問で次のような質問を行いました。(その1)

 

〇ふるさと納税について

質問:そもそも、ふるさと納税とは何か?その目的は?

【財政局長答弁】『自分の生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域やこれから応援したい地域の力になりたいという思いを実現し「ふるさと」へ貢献するための制度』として平成20年度に創設。

その内容は都道府県・市区町村に対して寄付をすると寄付額のうち2千円を超える部分について一定の上限まで原則として所得税と住民税から全額が控除されるしくみ。

質問:全国的に利用が拡大している。なぜ拡大したのか?

ふるさと納税の全国の受け入れ額は制度が創設された平成20年度には約81億円で、その後約100億円程度で推移していたところ,この3年間で大幅に増加しており平成27年度が約1,653億円、平成28年度が約2,844億円、平成29年度が約3,653億円となっている。

平成27年から、控除額の上限の引き上げや、寄附金税額控除を受ける際に確定申告が不要となる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設など、ふるさと納税がより身近になるような制度変更が挙げられる。

加えて、寄付者に対する返礼品の充実に取り組む自治体が増加するとともに、各地の返礼品の検索から寄付手続きまでを手軽に行えるインターネットサイトが普及したことなどにより、簡単に寄付を行うことができるようになったことが考えられる。

質問:福岡市への個人からの寄付件数、受入額はいくらだったのか、過去5年間の実績は?

個人からの寄付である「ふるさと納税」の件数及び受入額の実績は、

平成25年度  1,065件  約3,400万円

平成26年度   993件  約3,781万円

平成27年度   956件  約4,688万円

平成28年度   851件  約9,203万円

平成29年度   985件  約4,924万円

直近の29年度で約4924万円とのことですが、同年度のふるさと納税の受け入れ額の全国トップは大阪泉佐野市で135億円と聞いた。

質問:どうして福岡市とこのように大きな差があるのか?その要因は?

本年9月に総務省が公表した調査結果によると、これらの団体はいずれも、寄付額に対し3割を超える返礼品を送付している団体とされており、家電製品や高級食材など高価な返礼品が一つの要因と考えられる。

質問:自治体の返礼品競争が問題化している。国においてどのような対応がとられているのか?

返礼品に関する地方団体間の競争の過熱や、一部ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品の送付などの状況は、制度全体に対する国民の信頼を損ない、他の地方公共団体にも好ましくない影響を及ぼすことが懸念されるとして、「返礼品の割合の上限を3割以下とすること」、「金銭類似性の高いものや、資産性の高いものを返礼品としないこと」などを求めた通知が平成29年4月に総務大臣から発出されている。

また、平成30年4月には、地域資源を活用し地域の活性化を図ることも「ふるさと納税」の重要な役割であることを踏まえ、「返礼品について地方団体の区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切であること」もあわせて通知されたところ。

質問:国が自治体に見直しを要請したものの、返礼品の見直しを行わなかった自治体があった。このことに関し、福岡市の考えと総務省の考えは?

福岡市においては、ふるさと納税の現状が制度本来の趣旨とかけ離れたものとなっていることや、都市部において税収減になっていることについて、指定都市間で問題意識を共有しており、指定都市市長会から国に対し、ふるさと納税が地方団体の財政に与える影響を抑制するための見直しを要望している。

また、総務省においても一部の団体において返礼品の見直しが進まない状況を踏まえ、これらの団体をふるさと納税制度の対象外とする方向で、法改正もふくめた検討も行われているものと聞き及んでいる。

質問:ふるさと納税の魅力の一つに、寄付額が所得税・住民税から控除されること。福岡市民がふるさと納税を利用することによって、市に入るべき税収が控除され失った額はいくらか?

平成30年度で約29億9千万円

質問:ふるさと納税による減収額は、大都市にとって不利な制度になっていると思う。市の事実認識は?

ふるさと納税は、『自分の生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域や、これから応援したい地域の力になりたいという思いを実現し、「ふるさと」へ貢献するための制度』であり、都市部の住民による、ふるさとを始めとした地方への納税が想定されているもの。

また、福岡市の都市活力は九州各地からの広域的な人の流れに支えられていること。減収分については、地方交付税制度により一定の補填がなされることなどを勘案すると、ふるさと納税により大都市にある程度の影響が生じることは、やむを得ないものと認識。

過度な返礼品競争に本市は加わらずまじめにルールを遵守(じゅんしゅ)してきたとの気持ちもわかるが、ルール内での返礼品の見直し追加や、福岡のふるさと納税の魅力を高め、受け入れ額を増やす戦略も必要ではないか。

質問:福岡市の返礼品の品数と、どのような物が喜ばれているのか?市の返礼品選定の基準は?

福岡市における返礼品は、福岡市内産の農水産加工品を中心に13品目。平成29年度に希望が多かった返礼品は、唐泊恵比寿かき、博多米、志賀島産いちごジャムなど。

返礼品の選定にあたっては、寄付者が一度きりではなく継続的に寄付を行う動機づけになることや、農水産品のブランド化等の観点から、農林水産局等と協議を行ったうえで決定。

質問:福岡市のふるさと納税の返礼品として取り扱われることは、商品の知名度も上がりその影響は大きく魅力的。現在事業者からそのような売り込みはないのか?

市内外を問わず複数の事業者から、食品などの自社製品を返礼品として採用できないかという提案がなされている状況。

福岡といえば、ラーメンやうどん、もつ鍋や辛子明太子といった全国でも有名なものから、まだまだ知られていない商品や生産者が売り込みたい商品もたくさんあるはず。また食材に限らず博多の伝統工芸品やお土産に喜ばれる文化芸術品もあります。どの業者の商品を選定するのか、返礼品としてふさわしい価格帯で提供できるかなど様々な課題はあると思いますが、福岡市の産業を全国にPRできることは大きなチャンス。

質問:ルールの範囲内で福岡市を選んでもらう自治体PR競争に積極的に参入しないのはもったいないと思うが?

返礼品については、大都市でありながら全国に誇る農水産品が多いという福岡市の魅力を知っていただきたいという思いで選定しているが、議員ご指摘のように返礼品を通じて、福岡市の多様な魅力や取組みを全国の方々に積極的にPRしていく視点は重要。

今後、このような視点も踏まえ関係局と十分に連携を図りながら返礼品のあり方について検討を進める。

新潟市では、市の魅力発信を図るため、これまでの市が取り扱っていた農産物関連商品に加え新たな返礼品を公募により選定。従来の23品目から106品目に拡大。寄付額に対して返礼品の価格ランクを5つに区分し、市内に本店や支店・営業所または工場を有する法人、その他の団体ならびに個人事業主であることなどの要件を満たす事業者であれば1事業者あたり3品目を限度とし応募可能。選定は選考委員会による公平な審査が行われる。

問題なのは担当職員の業務が増えること。寄付者からの寄付確認、寄付金受領書の発行手続き、事業者への返礼品の発送依頼等業務はたくさんあり、職員がふるさと納税の対応だけに係ることは困難。

ふるさと納税に係る業務を、委託する自治体も多い。調査をしたら、政令指定都市20市中8自治体が業務委託。中核市でも調査した54市のうち37市が業務委託による運営。

質問:福岡市も返礼品選定にあたっては公募という手法をとってはどうか?また、ふるさと納税に係る事務作業も業務委託を検討してはどうか?

返礼品の選定については公正な選定が重要と認識しており、このような観点も十分に踏まえ、議員からご紹介いただいた公募の方法など、選定のあり方を関係局とともに検討。

また、あわせて返礼品の発送などの事務作業についても、他団体の取り組み状況を調査し業務の効率化を図る。

質問:これまで福岡市における目的別寄付事業の中で、寄付者の共感を得、寄付が多くの方から集まった事例は何?寄付者の動機は?

ふくおか応援寄付のメニューのうち、これまで最も多くの寄付をいただいた事業はこども病院の入院児に付き添う家族のための滞在施設である、ふくおかハウス建設募金で1,169件、約1億5,152万円の寄付をいただいた。

また、過去3年間において寄付件数が多かった事業は

・動物愛護事業が、1,155件,約2,360万円

・福岡城整備基金が、637件,約3,229万円 である。

これらの事業は寄付者から返礼品は不要という申し出や、福岡市の取組みを激励するメッセージを多数いただくなど、事業に対する共感・賛同が大きな動機付けになっているものと考えている。

自分の生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域や、これから応援したい地域の力になりたいという思いを実現し、「ふるさと」へ貢献するための制度が、ふるさと納税の目的。そこに立ち返るならば、例えば、郵便局が取り組んでいる「ふるさとで暮らす父母の見守りサービス」や、シルバー人材センターやNPOが取り組んでいる「空き家になってしまった実家の管理見回りサービス」、また「お墓の除草や掃除を依頼できる事業」などを返礼品に加えセットすれば、継続した寄付も期待できるのではないのでしょうか。

質問:個人・ふるさとの家族の悩みでもあり、今後の社会問題ともいえる課題に手を打つ返礼事業も積極的に実施していくべき。行政各局が積極的に事業を提案し全国にPRしてはどうか?

ふるさと納税については、議員ご指摘のとおり、地方団体がそれぞれの地域社会の課題に対応した施策を実現していくうえでも大きな役割を果たすことが期待できるものと考える。

このような観点から福岡市における地域課題やニーズ等を踏まえ、ふるさと納税のメニューにサービスの提供を加えることについて、他団体の取組みを参考にしながら関係局と検討していく。

ルールを守り、寄付という本来の主旨を根本にしつつ、寄付金の活用事業の内容を更に充実させていくべきであり、いただいた寄付金が市政にどのように反映されたのかなど、報告もきちんと公表され、寄付していただいた方々の思いに真剣に応えながら継続していくべきものと感じる。

質問:ふるさと納税の返礼品においては、福岡の食材や特産物、伝統工芸品など福岡市の産業や文化、魅力を大きくPRするチャンス。ふるさと納税の今後の取り組みについて髙島市長の考えは?

【髙島市長答弁】ふるさと納税については、自治体が国民に取組みをアピールすることで、選んでもらうに相応しい地域のあり方を考えるという意義をもつものであり、今後、それぞれの取組みにより、応援したい自治体が選択されるような制度になっていくことが望ましいと考える。

福岡市を応援したいという善意に応えていくため、返礼品を活用して市の多様な魅力をアピールしていくことも含め、ご提案頂いた様々な工夫を検討し、より多くの方々から福岡市の施策・事業に共感・賛同を得られるよう、ふくおか応援寄付の推進に取り組んでいく。