「福岡・博多の伝統工芸継承支援」について
質問:本年は博多織777周年記念事業として様々なイベントが実施された。どのような取り組みだったのか?成果はどうだったか?
【経済観光文化局長答弁】取組み内容については,着物ファン向けのイベントの開催やPR動画製作、若者に人気の高いブランドとのコラボ商品開発などの初めての取組みにより、認知度向上と販路拡大を図った。成果としては、毎年開催している博多織求評会等のイベントでは例年4千人余りを集客しているが、今年度は既に5千人以上を集客している。販売額についても、例年のイベントに加え、新たにモニター販売会の開催やKOUGEI EXPOへの出展等で、例年の3倍以上の売上げとなっている。
質問:福岡・博多にゆかりのある伝統工芸品には、国指定のものと、県指定のものがある。それぞれどのようなものがあり、指定される要件はどうなっているのか?
国指定の工芸品は、博多織、博多人形の2品目で、指定要件は、主要工程が手作りであること。技術・技法に100年以上の歴史があり、一定地域で一定数以上が製造に従事していることなど。
県指定の工芸品は、博多曲物、博多鋏、博多張子、博多独楽等の7品目あり、指定されるには、福岡県内で製造されていること。技術・技法に50年以上の歴史があることなどが要件とされているが、従事者数等は要件とされていない。
博多織や博多人形は全国的にも有名。博多曲物や博多鋏なども伝統的な福岡・博多の伝統工芸品ですが、一般にはあまり知られていないように感じます。
質問:国指定の工芸品と、県指定の工芸品について,平成29年度の決算額も含め、福岡市の支援にどのような違いがあるのか?
国の工芸品については平成29年度の決算額は約1,300万円で、東京での展示・販売会による販路拡大や、博多織デベロップメントカレッジ、博多人形師育成塾等の後継者育成支援などを行っている。
県指定の工芸品については、平成29年度の決算額は60万円ではあるものの、市内での展示・販売会の開催や大学生との協同による商品の開発など、地元での認知度向上を図る事業を支援している。なお、「はかた伝統工芸館」では国及び県の工芸品の情報発信等の支援を行っており、その管理運営費は平成29年度決算額で約2,760万円。
質問:伝統工芸の振興目的は、産業の振興や伝統文化の継承などの側面があると思うが、福岡市はどのような観点で施策を進めているのか?
福岡市の伝統工芸品の振興は「認知度の向上」「販路の拡大」「後継者の育成」の観点で支援を行っている。その中で、最初に取り組むべきは「認知度の向上」であると考えている。まずは伝統工芸品の存在を知ってもらうことで、消費者に購入してもらうという次の段階に進めるものとしている。その次に「販路の拡大」に取り組み、より多くの消費者に購入してもらうことで、伝統工芸品の製造に従事する人々の生活の安定と地域産業の振興に繋がるものと考えている。さらに、地域産業の永続的な振興を図るため「後継者育成」に取り組み、伝統産業の技術・技法の継承を支援していきたいと考えている。
質問:「認知度の向上」「販路の拡大」を目的とする福岡市の取り組みは有効だったのか?成果はあったのか?
認知度の向上」については,入館者が年間12万人を超える「はかた伝統工芸館」で常設の展示・販売を行うとともに、若者に人気の映画やアニメ等とコラボした博多人形を開発するなどこれまで伝統産業に縁がなかった層への浸透も図っている。
「販路の拡大」については市内の若者に人気の商業施設、東京や上海の百貨店、韓国や台湾のイベントなどで展示販売を行い、国内外の新たな顧客開拓と販路拡大を図っている。
その結果、市内のホテルのインテリアとして博多織が採用されたり、国際会議や国際交流の際のお土産品として博多織、博多人形の活用数も増えてきている。
福岡市は「博多旧市街プロジェクト」で、歴史ある博多部のハード面の整備に事業費を投じ、観光客受け入れの利便性・魅力向上を図っている。伝統文化を後世に残し続けるためにも、伝統文化の継承などソフト面の取り組みが、もっと必要ではないかと懸念します。
質問:福岡市でも伝統産業の職人が少なくなっていると伺った。「後継者育成」として、これまでにどのような取り組みを行ってきたのか?
博多織については、博多織工業組合と国、県、市が連携して後継者を育成する「博多織デベロップメントカレッジ」を支援しており、平成18年度から平成29年度までに71人が卒業し、そのうち42人が織元への就職や独立を果たしている。
博多人形については、博多人形商工業協同組合と福岡市が連携して、後継者の育成のため「博多人形師育成塾」を支援しており平成13年度から平成29年度までに342人が修了し、そのうち68人が博多人形の制作に関わっている。
国指定の博多織と博多人形については、後継者を育成する取り組みが行われており、まずは安心。
葛飾区では伝統工芸品が46品目、伝統工芸士が70人指定されていますが、伝統工芸士の高齢化等により、現在は40品目で伝統工芸士は35人まで減っています。葛飾区の伝統工芸士の高齢化や後継者不足は深刻であり、その優れた伝統工芸技術・技法を後世に継承するために、全国から伝統工芸に興味のある講習生を募り、伝統工芸士のもとで、技能の概要や基本知識の学習、製作体験などの講習会を経て、弟子入りへと繋げていくという事業です。事業期間中の指導・育成料および講習生の住居費、生活費の一部を市が伝統工芸士側に補助する事業です。この事業は、すでに平成21年から23年にかけて実施され、その際に弟子になった16人のうち7人が現在も職人として活躍しているそうです。この度、平成29年10月より2度目となる事業を開始。7人の伝統工芸士募集枠に対し全国から44人の応募があり、その中から選ばれた11人が2か月間の講習期間を終了。引き続き6か月の仮弟子期間を経て、現在は弟子期間として平成31年9月までの合計15か月間の生活を支援しながら後継者育成を行っています。対象は、区で認定した伝統工芸士のうち、弟子入り事業の趣旨を理解し、弟子の受け入れを希望する者、および受け入れを希望する伝統工芸士の所属する企業であり、伝統工芸士が直接指導することを条件としています。弟子入り側の対象はおおむね19歳から25歳の者。ただし対象年齢を超えた者でも本格的に伝統工芸職人の道を進もうとする意欲のある者については面談等によって受け入れるとともに、伝統工芸士の親族には適用されないなど厳格なルールのもと運営されています。また、新潟県長岡市も訪問しお話を伺って参りましたが、長岡市でも「伝統工芸後継者育成支援事業補助金」を平成28年4月より創設。一人前の職人になるには、一般的に10年の期間を要するため、複数年での支援が必要と認識し、弟子期間の長い期間での生活費を支援する事業。
質問:全国各地で伝統工芸の技術者継承者不足の課題があり、危機感を持っている自治体も多い。このような自治体が取り組む「後継者育成補助金事業」を福岡市でも取り入れてはどうか?
当該事業を実施する他自治体によると、支援事業をしてもらうことは助かるという職人・弟子からの声がある一方で、福岡市としては、この事業で生活費等を支援することに対する社会的な理解や、行政が継続的に支援しても最終的に職人になるのかといった解決すべき課題も少なくないと考えている。
質問:福岡市も、伝統工芸の後継者の育成は重要と思うが、市はどのような考えなのか?
後継者の育成は、福岡市としても大変重要と認識。そのため国指定の工芸品については、地域産業の振興の観点から福岡市としても博多織デベロップメントカレッジや博多人形師育成塾などを通じて引き続き後継者育成を支援していく。
一方、県指定の工芸品については、国指定の工芸品と比較してまだ認知度が高いとは言えないため、まずは認知度の向上を図ることで販路を拡大しようと取り組んでいる。平成28年度からは、職人と大学生が協同して博多独楽や博多張子などを制作しており、若者の認知度向上を図ることにより販路を拡大し後継者の育成につなげていきたい。
本年、「博多織777周年事業」として盛大なイベントが実施され、市内外に関わらず多くの方々に福岡博多の伝統文化に関心を持っていただくことができ、認知度向上や販路拡大につながったことは、大変喜ばしいこと。私はこの伝統や文化を、後世に余すところなく、伝え残していけることが理想だと考えます。
質問:歴史ある福岡・博多の伝統文化を次の時代へどのように継承し、未来へ存続させていくのか?市長の決意をお伺いします。
【髙島市長答弁】
○福岡市には博多織、博多人形をはじめ、博多曲物、博多鋏、博多張子、博多独楽など様々な伝統工芸品がある。
○これらの伝統工芸品は、地域産業の観点のみならず、福岡・博多における固有の歴史的文化的価値を有するものとして「博多旧市街プロジェクト」においても「博多らしさ」を表す魅力の1つであると認識している。
○今年は博多織伝来から777周年という記念の年を迎え、11月には福岡市を主会場として、KOUGEI EXPOも開催されるなど、伝統工芸品の振興にとって記念すべき年となり今後も様々なチャレンジをする機会が多くなる。
○市としても、こうした伝統工芸を地域産業として育成し、その技術にさらに磨きをかけて、福岡・博多の伝統文化として未来につないでいくことができるようこれからも伝統工芸の振興を図っていく。