この質問にあたり、まず商店街の歴史と現状を整理してみます。
商店街は、戦後復興期から高度成長期にかけて数を増やし、いわゆる地域の一等地で商売をするなど、「町の顔」として存在し、祭りを開催するなど地域活性化の担い手、地域コミュニティを形成する「場」として地域に貢献してきました。
その後、百貨店やスーパーマーケットが台頭したことにより、商店街はその地域内において大型店と競合することになりました。
1973年以降、「大規模小売店舗立地法」によって大規模小売店の出店が規制されてきましたが、1993年(平成10年)に法律が改正され、郊外への大規模小売店の出店が進みました。加えて自家用乗用車の普及(いわゆるモータリゼーション)の進展もあり、人々の買い物は近所の商店街から郊外の大規模店へ徐々に移行していったのです。
その結果、商店街を中心とする中心市街地は空洞化。さらに追い打ちをかけるがごとく、近年の情報技術の進展にともない、ネット通販が市場を拡大。リアル店舗とネット店舗による販売競争も起こるなど、商店街の経営状況はますます厳しくなったと言われています。
現在、市内の商店街・商店連合会は各区にいくつあるのか、また40年前と比較して、商店街・商店連合会の数は各区どのように変化しているのか伺います。
【経済観光文化局答弁】
(※福岡市商工会議所作成:市商店街マーケット名簿引用)
商店街・商店連合会数 | 東区 | 博多区 | 中央区 | 南区 | 城南区 | 早良区 | 西区 | 市合計 |
1980年(40年前)※ | 36 | 49 | 50 | 27 | 62 | 224 | ||
2017年(最新) | 27 | 27 | 34 | 14 | 5 | 14 | 17 | 138 |
約40年間で86もの商店街が消滅していることがわかりました。
これは本市のみならず、全国的にも商店街が減っている現状があり、商店街の厳しい運営実態が伺えます。
ある調査機関によると、「商店街の経営者の高齢化による後継問題や店舗や設備の老朽化が深刻」という調査結果が出ていました。
福岡市では市民に対し「令和元年度市政意識調査」(資料①)を行い、商店街に関するアンケートを行っておられます。
そこで伺いますがこのアンケートの中で
商店街利用者が「商店街の利用で困ったことは何ですか」との問いに対し、多かった答えのうち上位3つをお示しください。
【経済観光文化局答弁】
- 駐車場・駐輪場がない
- 多種多様な店舗がない
- トイレ・ベンチなどの休憩スペースがない
では「今後商店街に期待することは何ですか?」の問いに対し、多かった答えのうち上位5つをお示しください。
【経済観光文化局答弁】
- 多種多様な店舗の充実
- 質の良い商品・サービスの取り扱い
- 駐車場・駐輪場の整備
- 値段の安い商品・サービスの取り扱い
- トイレ・ベンチなどの休憩スペースの整備
「駐車場や駐輪場の整備」、「トイレ・ベンチなどの休憩スペースの設置」等、いわゆるハード面の整備に期待する答えが出ています。時代の変化にともなう利便性の向上が求められていることも事実で、商店街のハード面の更新が課題となっています。
商店街に関する意識調査から見えてきた商店街の課題ともいえるハード面の整備について、本市は具体的にどのような対応を取られるのか、新年度の取り組みを伺います。
【経済観光文化局答弁】
- 商店街が新たにアーケード等の共同施設を設置する際には,「商店街高度化支援事業」にて支援。
- 商店街が国内外からの観光客の消費を取り込むためハード整備を行う際には,新規事業である「商店街観光振興事業」にて支援。本事業では,イベント開催などのソフト事業に加えて,観光客等をおもてなしするためのトイレやベンチといった休憩スペースの設置等,ハード整備の支援も行う。
ハード整備が求められる商店街の現状がある中で、老朽化した設備の安全対策も課題です。
昨年秋に発生した「台風19号」の突風によって、博多区内にある、商店街のアーケードの一部が飛んでいってしましました。すぐに見に来てくれないかと商店街から連絡をいただきました。
商店街のアーケードの一部が落ちた写真です。現在でもこの状態です。
その日現地を見に行くことが出来なかったため、行政に対応をお願いすると、いくら公道上であっても商店街による占有物であれば占有主である商店街が対応する案件であり、処置や修繕をする立場ではないとのことでした。
そこで道路下水道局に伺います。公道に設置されている街灯など設置物の維持管理はどのような規定に基づいているのか。また、商店街に設置されている防犯灯やアーケードの維持管理は、行政が責任を担う立場ではなく、事故の場合の責任も一切ないということなのか伺います。
【道路下水道局答弁】
〇道路上に設置されている街灯などの設置物については,道路管理者が設置する,道路法第2条に定める「道路附属物」と,道路法第32条に基づいて許可を受けた占用者が設置する「道路占用物件」がある。
〇防犯灯やアーケードなどの維持管理については,「道路占用物件」であるため,道路法第39条の8に基づき占用者が自ら行うべきものである。また,これらの占用物件の設置又は維持管理が適切に行われなかったことにより他人に損害を生じさせたときは,民法等の規定により占用者がその損害を賠償する義務を負うことになる。
将来的に老朽設備の維持管理費や撤去費用を用意できない占有者が出てくることも想定されます。そのような場合の行政の対応を伺います。
【道路下水道局答弁】
〇「道路占用物件」の維持管理については,道路法第39条の8に基づき占用者が自ら行うべきものとなっており,設備が老朽化した場合など占用を廃止する必要が生じたときは,同法第40条に基づき,その設備を除却し原状に回復する必要がある。
老朽化した商店街の防犯灯などの占有物に関して、通行人の安全面を考えると撤去が望ましいが維持管理や撤去費用を捻出できない占有者を支援できる施策を道路下水道局は、考えるべきだと思いますがご所見を伺います。
【道路下水道局答弁】
〇福岡市は「犯罪のない安全ですみよいまちづくり推進条例」の基本理念に基づき,防犯施策を推進している。
〇道路下水道局としては,自治会,町内会と同様に商店街が設置する防犯灯に対して補助制度を設けている。具体的な補助の内容は,撤去あるいは新設を行う場合の工事費や,電気代などの管理費の一部を補助している。
〇今後,商店街施策を所管する経済観光文化局と連携し,補助制度の周知に努めていく。
※商店街の防犯灯は、自治会や町内会が設置する防犯灯と同じように補助制度が出来ていることをしっかりと周知していただきたいと要望しておきます。
商店街を支援している経済観光文化局は、アーケードが飛んだ商店街に対しどのような対応を行ったのか、また買い物客の安全対策のため商店街にどのようなアドバイスを行ったのか伺います。
【経済観光文化局答弁】
・連絡を受け,担当職員が現場を確認するとともに,関係部署へ連絡。
・事故が発生した場合,施設管理者,すなわち商店街の責任となるため,来街者への安全確保のため早急な対応が必要な旨を助言するとともに,市の商店街支援施策の一つである「商店街高度化支援事業」について紹介。
その「商店街高度化支援事業」とはどのようなものか、概要と新年度の予算額を伺います。
【経済観光文化局答弁】
・商店街を取り巻く厳しい経営環境に対処するため,商店街に共同事業に要する施設と整備する,いわゆる高度化事業に対して支援。
・高度化事業計画支援
商店街が実施する共同施設設置事業の計画段階における助言・診断等の実施。
・共同施設設置補助(ハード整備事業に対する補助)公共的共同施設:認定事業費の20%以内 40,000千円を限度
その他共同施設:認定事業費の10%以内 20,000千円を限度
・令和2年度予算額 1,071千円
本市の商店街高度化支援事業は更新するための支援メニューです。
恐ろしいことにアーケードは更新してもやがて朽ちていき、将来的には再び老朽化します。
老朽化する危険な設備であるアーケードを後世に残し続けるくらいなら、一気に取り払う「撤去」という選択を考える商店街も出てくると思われます。
全国的にもこのようなケースが発生しております。
博多区のこの商店街では当初「撤去」も含め検討していましたが、福岡市において撤去に関する支援が無く、高度化という条件なら支援策があるとのことから今回は決断されたようです。
商店街の老朽設備を、更新ではなく「撤去」する際の費用の補助制度はないのか伺います。
【経済観光文化局答弁】
・「商店街高度化支援事業」においては,商店街が経営の合理化,高度化を図るためにアーケード等の共同施設を設置する場合に,その設置経費の一部を補助することとしており,単なる補修や撤去については補助の対象とならない。
議会事務局の調査によれば、他の自治体でも「商店街のアーケードの撤去に係る支援を行っている自治体が横浜市をはじめ、いくつかあるとのことでした。また、県単位においても商店街アーケードの撤去費を支援している自治体があるとのことでした。私は先日兵庫県庁を訪問し話を伺って参りました。
兵庫県のアーケードの撤去に対する支援の条件は、
*申請時の組合員数が、アーケード建設時の組合員数から2/3以下に減っていること。
*申請時の空き店舗が全体の店舗の1/3以上であること。
*補助率は通常1/3以内、補助限度額は500万円
老朽化したアーケード等の撤去を支援している主な理由として、「商店街における空き店舗等を住宅への転換を可能にすること。」
近隣のマンションなど高層の建物から商店街を見下ろした時に、老朽化したアーケードは見栄えが悪かったが、撤去したことにより景色がきれいに感じられ都市の景観が向上し資産価値があがること。
またアーケードを撤去したことによって青空が見えること。商店街が昼間は劇的に明るくなるという効果と、住宅の建設が可能になりまちの賑わいを戻す結果にもつながりました。
老朽化した商店街のアーケードの撤去を支援することは、一見、後ろ向きの施策に思われがちですが、維持費が今後不用になることなど、商店街の負担を減らしつつ、商店街そのものを存続させていくための非常に前向きな施策です。との担当者の意見がとても印象的でした。
本市においても一定の条件のもと、商店街の老朽化したアーケードなどの設備を撤去する場合の支援策を検討すべきと考えますが経済観光文化局の所見を伺います。
【経済観光文化局答弁】
・アーケード等の共同施設は商店街が保有する資産であり,その維持管理は,一義的には商店街の責任で実施するものと考えている。
・全国的には多くの商店街が組合員数の減少や高齢化等による組織力の低下,並びに財政力の低下等の理由により,アーケード等の共同施設の維持・管理が難しくなってきており,その対応が課題。
・共同施設の撤去には多額の費用が必要なため,他の指定都市とともに指定都市市長会を通じて,国に対して財政的支援について提言を行っている。
・本市でも,商店街施設の老朽化を課題として認識しており,支援のあり方について,他の政令市の動向を踏まえ検討していく。
商店街の減少が本市以上のスピードで進んでいる自治体もあり、課題は深刻です。調査していただき早急な導入をお願い致します。
この質問の最後に、商店街の負担を軽減させ、商店街の存続を図るための商店街の支援振興について、髙島市長に所見を伺います。
【市長答弁】
○商店街は,地域経済の担い手であるとともに,コミュニティの担い手として,地域の活力を支える重要な存在であると認識。
○このため,商店街に来られる方が快適に,安心して買い物を楽しめる環境の整備や,訪れたくなるような魅力向上の取り組みをこれまで支援してきた。
○令和2年度からは,商店街のさらなる活性化を図るため,宿泊税を活用して,観光客の消費取込みを目的とした商店街の取組みを積極的に支援して,観光客や地域にとって訪れたくなるような魅力的な場所となるよう,ハード・ソフトの両面から支援していく。